エクセルのグラフ機能は、多くの機能の中でも目玉のひとつですね。
この機能を使うことで、数学的な関数の学習を深めることができます。
本記事では「グラフ機能を用いて様々な数学的関数を学ぶ方法」について解説します。
この記事の内容
1.グラフ機能について
こんにちは。エクセルマン・ブリーダーのしもむぎ(@re_znd13)です。
まずはエクセルのグラフ機能について見てみましょう。
グラフ機能は、【挿入】タブから【グラフ】と進み、グラフの種類を選択するという手順で使用することができます。
本記事では、数学的関数の学習をテーマにしていますので、【散布図】と呼ばれるグラフを主に扱います。
散布図というのは、2つの要素の相関関係をグラフ化するのに向いています。
2つの要素というのは、例えば、xとyというようなものです。
x軸とy軸を作り、(x、y)の座標をプロットできるのが散布図と考えればよいかと思います。
2.グラフを描画する準備
具体的には、以下の手順で、様々な関数をグラフ描画し、視覚的に対象の関数の理解を深めたいと思います。
- 係数を用意する
- x座標を用意する
- x座標に対応するy座標を計算させる
- x座標とy座標をもとに散布図グラフを描画させる
1次関数、2次関数・・・といった高次関数を学習するためのシートのイメージ図は以下です。
ここでは4次関数までを対象としてみました。
A、B列は係数を簡単に変えられるような仕組みを置いています。
D、E列はx座標とy座標です。
y座標の部分には、対象の関数を入力してあります。
その際に、A、B列の係数も参照するようにしています。
例えば、4次関数というとy=a*x^4 + b*x^3 + c*x^2 + d*x + eというような形ですね。
4次関数まで使用しないよ、って方もいるかと思いますが、その場合には、a、bをともに0として2次関数に対応したり、a、b、cを0として1次関数に対応したりできるように組んでいます。
少し先まで学習対象を拡張できるように、ということですね。
そしてH列より右側に散布図グラフを置きました。
x軸、y軸は青線にしています。
係数を変えたり、x座標の範囲を変えたりすると、グラフが自動で変更され、視覚的にどういう変化が起こるかわかるようになります。
3.様々な関数とグラフ
3.1 高次関数(1次、2次、3次、4次関数まで)
1次関数、2次関数は中学数学、3次関数、4次関数は高校数学で扱うかと思います。
そこで本節では、1次~4次関数までを対象にして、学習用のシートを作成してみましょう。
完成イメージは以下の画像を参照ください。
上述したステップに則って、各パートの作り方を見ていきましょう。
3.1.1 係数を用意する
A、B列の解説です。
y=a*x^4 + b*x^3 + c*x^2 + d*x + eという4次関数を考えると、係数はa、b、c、d、eの5つですね。
4次関数に慣れない方には見にくいかもしれませんが、例えば2次関数であれば、a、bを0として、y=c*x^2 + d*x + eと考えてください。
後のステップでy座標を計算させるときに参照できるように、このような係数専用の枠を設けます。
3.1.2 x座標を用意する
D列の解説です。
D列にはx座標を用意します。
関数に応じて変更したいかと思いますので、固定値を入れられるようにしています。
ここでは-5~5まで、1刻みとしていますね。
xやyの取り得る範囲を求める問題を考えるともう少し工夫できますが、ここでは固定値を入れるレベルにしておきます。
3.1.3 x座標に対応するy座標を計算させる
E列の解説です。
今回は4次関数までを考えていますので、y=a*x^4 + b*x^3 + c*x^2 + d*x + eという式でy座標を求めます。
a、b、c、d、eを絶対参照とし、x座標を相対参照として、以下のような式を入力します(ただし、E3セル)。
=$B$2*D3^4+$B$3*D3^3+$B$4*D3^2+$B$5*D3+$B$6
ここで、絶対参照とは$B$2のような参照の仕方です。
E3セルからE13セルまでコピペまたはオートフィルをしても、絶対参照の対象セルは変わりません。
一方、相対参照とはD3のような参照の仕方です。
E3セルからE13セルまでコピペまたはオートフィルをすると、D4、D5・・・というように相対的な位置のセルを対象にしていきます。
3.1.4 x座標とy座標をもとに散布図グラフを描画させる
最後のステップはグラフの描画です。
D、E列の座標をもとに散布図という種類のグラフを使って、グラフを描画させます。
D3セル~E13セルを選択して、【挿入】タブの【グラフ】から、【散布図】を選択します。
【散布図】の中にもいくつか種類がありますので、右の▼マークをクリックしてプルダウンさせ、図の赤丸の【平滑線とマーカー】というのを選択しましょう。
ここからは任意ですが、グラフの各種設定をすると、グラフを見やすくすることができます。
【軸の書式設定】という項目では、x軸とy軸が常に原点(0、0)で交わるように設定できます。
x軸をダブルクリックすると、【軸の書式設定】が開きますので、【縦軸との交点】の項目で、【軸の値】を選択し、0と入力します(下画像の赤丸部分)。
y軸も同様にして、【横軸との交点】を0としておきます。
同じく【軸の書式設定】ですが、【塗りつぶしと線】という項目で、軸を視覚的に見やすくすることも可能です。
下の画像のように、【塗りつぶしと線】のアイコンを選択します。
【線(単色)】を選択して、【色】を任意の色に変えたり、【幅】を太くしたりすることができます。
もうひとつ【軸の書式設定】で知っておきたいのは、軸の最小値と最大値です。
特にy軸において設定が必要な場合が出てくるかと思いますが、下の画像のように、【軸の書式設定】の【軸のオプション】で、グラフに表示する最小値と最大値を固定値に設定できます。
デフォルトでは自動になるため、場合によっては1000とか10000といったオーダーで変更され、思ったようなグラフに見えないことがあります。
そういった場合には、こちらの設定を変更してみてください。
3.1.5 グラフの変化の確認
係数を変更して、グラフの変化を確認してみましょう。
まずは4次関数の例です。
次に3次関数の例です。
次に2次関数の例です。
最後に1次関数の例です。
これらは係数を変更させただけですが、必要に応じてx座標の範囲を変更したりもしてみましょう。
3.2 複数の関数の表示(交点の確認など)
関数を扱う問題で、交点を求めたりするものもありますよね。
そこで本節では、複数の関数のグラフを同時に表示させられるようにしてみましょう。
シートの完成イメージは以下の画像を参照ください。
例として、青い1次関数とオレンジの2次関数が表示されていますね。
交点でいえば、x=-3の辺りにひとつ、x=3の辺りにひとつあることが視覚化できえちますね。
3.2.1 係数を用意する
A、B列の解説です。
ふたつの関数を同じシートに作りますので、係数群もふたつ用意する必要があります。
ひとつめの関数用の係数群をa1、b1、c1、d1、e1としました(A2~B6セル)。
ふたつめの関数用の係数群をa2、b2、c2、d2、e2としました(A8~B12セル)。
3.2.2 x座標を用意する
G列の解説です。
G列にはふたつめの関数用にx座標を用意しました。
値としては、ひとつめの関数と同じにすることが多いかもしれませんね。
全く同じ値を使いたい場合は、G3セルに「=D3」として、G13セルまでコピペまたはオートフィルをするのがよいでしょう。
3.2.3 x座標に対応するy座標を計算させる
H列の解説です。
ふたつめの関数用に用意した係数群とx座標とから、y座標を計算させます。
ひとつめの関数と同様、絶対参照と相対参照とを組み合わせて、以下のような式を入力します(ただし、H3セル)。
=$B$8*G3^4+$B$9*G3^3+$B$10*G3^2+$B$11*G3+$B$12
これをH13セルまでコピペまたはオートフィルで入力すればOKです。
3.2.4 x座標とy座標をもとに散布図グラフを描画させる
ここまでできたら、グラフにふたつの関数のグラフを表示させます。
もともと、ひとつめの関数用に散布図グラフがあるので、ふたつめの関数のグラフを追加で表示させる方法を見ていきましょうね。
グラフを追加する場合、グラフを右クリックして、【データの選択】という項目を選択します。
そうすると、下画像のような小ウィンドウが開きます。
系列1というのが、ひとつめの関数に関連するものです。
【凡例項目】という欄の中の【追加】をクリックしましょう。
そうすると、【系列の編集】という小ウィンドウが出てきます。
系列名は任意です
【系列Xの値】という欄を選択して、ふたつめの関数用に用意したx座標のセルを範囲選択します(ここでは、G3~G13セル)。
同じく、【系列Yの値】という欄を選択して、ふたつめの関数用に用意したy座標のセルを範囲選択します(ここでは、H3~H13セル)。
ここまでできたら【OK】をクリックして、このウィンドウを閉じます。
そうすると、【凡例項目】の欄に、系列2が追加されました。
【OK】をクリックして、このウィンドウを閉じます。
そうすると、散布図グラフにふたつのグラフが表示されましたね。
ふたつの関数の係数群やx座標を変更したりして、ふたつの関数のグラフがどのような位置関係にあるか、確認してみましょう。
3.3 三角関数
高校数学では三角関数も出てきますね。
高次関数と比べると少し特殊な関数ですので、グラフが簡単に視覚化できるとより理解が進むかと思います。
基本的には3.1節や3.2節で取り上げた高次関数と同様の考え方でよいのですが、三角関数の学習シートを作成してみましょう。
シートの完成イメージは以下の画像を参照ください。
3.3.1 係数を用意する
A、B列の解説です。
係数はa、b、cの3つとしました。
y=a*sin(b*θ+c)という式を想定しています。
3.3.2 θ座標を用意する
D列の解説です。
三角関数ではx座標の代わりにθという角度が必要ですよね。
そこで、D列にはθを用意します。
表示に必要な周期は問題にもよりますが、最初は0~720°程度を見ておくとよいかもしれません。
3.3.3 角度θに対応するy座標を計算させる
E列の解説です。
A、B列の係数群と、D列の角度θをもとにして、y座標を計算させます。
ここでは、y=a*sin(b*θ+c)という正弦波の式を想定していますので、E3セルには以下のような式を入力します。
係数群は絶対参照とし、角度θは相対参照であることに注意です。
また角度θと係数cの扱いにも要注意です。
ここまでの解説では、角度θと係数cは、ワークシート上では°(度、degree)で扱うようにしてきました。
しかし、エクセルのsin関数やcos関数、tan関数は、rad(ラジアン、radian)がデフォルトとなっています。
そこで、360°を2π(パイ)へ変換するようなRADIANS関数を用いる必要があります。
=$B$2*SIN($B$3*RADIANS(D3)+RADIANS($B$4))
ワークシート上にて、角度θや係数cを°(度、degree)でなく、rad(ラジアン、radian)で用意した場合は必要ありませんので、ご注意ください。
ちなみに、RADIANS関数の反対にDEGREES関数というのもあります。
3.3.4 角度θとy座標をもとに散布図グラフを描画させる
角度θとy座標をもとにグラフを描画させます。
3.1.4項や3.2.4項と同様、グラフの種類は【散布図】の【平滑線とマーカー】がオススメです。
3.3.5 グラフの変化の確認
係数群や関数(sin、cos、tan)を変更して、その変化を確認してみましょう。
y=sin(θ+30°)の例です。
係数aが1ですので、振幅は1となっていますね。
係数bが1ですので、1周期は360°となっていますね(720°で2周期入っているとも言えます)。
係数cは30ですので、位相が30°ずれていることがわかりますね(θ=0のとき、0.5(=sin30°)となっていることがわかる)。
y=2*cos(0.5θ)の例です。
係数aが2ですので、振幅が2となっていますね。
係数bが0.5ですので、1周期は720°になっていますね(720°で1周期入っているとも言えます)。
係数cは0ですので、位相はずれていません(θ=0のとき、最大の2となっている)。
y=tan(0.5θ)の例です。
tan(タンジェント)の場合は、sinやcosと見方が少し違いますが、係数aが1なので、θ=90°のときの値が1となっていることがわかります。
また係数bが0.5なので、1周期が360°となっていることがわかります。
tanは連続でないので、少し見にくいですが、θ=180°で無限大(-無限大)となっていて、θ=540°でも無限大(-無限大)となっていることから確認できるかと思います。
係数cは0ですので、位相にずれはありません(θ=0°で0となっている)。
3.4 円や楕円のグラフ
高校数学では、円や楕円の式も学びますよね。
そこで、円や楕円についての学習シートも作成してみましょう。
シートの完成イメージは以下の画像を参照ください。
3.4.1 係数を用意する
A、B列の解説です。
楕円の式は以下で表されますよね。
{(x-p)/a}^2 + {(y-q)/b}^2 = 1
円の場合は、a=bの制約があり、中心は(p、q)になるのでした。
そこで、a、b、p、qをA、B列に用意します。
3.4.2 角度θを用意する
D列の解説です。
円や楕円を描くには、角度θを考える必要があります。
コンパスを角度θが0°~360°までぐるっと1周させるイメージですね。
そこで、D列には0~360の値を用意しました。
刻みは任意でOKです。
ラジアンで0~2π(パイ)としてもOKです。
3.4.3 x座標とy座標を計算させる
E、F列の解説です。
上記のような式で表される楕円において、x座標は以下の式になります。
x=a*cosθ-p
そこで、E3セルには以下の式が入ります。
角度θを°(度、degree)で設定したので、RADIANS関数を使用していることに要注意。
=$B$2*COS(RADIANS(D3))-$B$4
一方で、y座標は以下の式になります。
y=b*sinθ-q
そこで、F3セルには以下の式が入ります。
=$B$3*SIN(RADIANS(D3))-$B$5
ここでもRADIANS関数を用いることにご注意。
E3、F3セルをE21、F21セルまでコピペまたはオートフィルすればOKです。
3.4.4 x座標とy座標をもとに散布図グラフを描画させる
グラフ描画の説明です。
3.4.3項でx座標、y座標が求められていますので、これらを【散布図】の【平滑線とマーカー】でグラフ化すればOKです。
3.4.5 グラフの変化を確認
係数群を変更してグラフの変化を見てみましょう。
円の例です。
a、bが同じ値となっているので、以下のような式に変形できるはずです。
(x-p)^2 + (y-q)^2 = a^2
このような形式にすると、半径がaの値となることがわかりますね。
円の中心は(-p、-q)になっているはずです。
描画したグラフを見てみましょう。
中心が(-2、-1)、半径が2の円が描かれています。
楕円の例です。
aの値が3、bの値が2となっていることから、長軸の長さは6、短軸の長さは4となるはずですね。
この例では(p、q)を(0、0)としているので、中心の位置は原点となるはずです。
描画したグラフを見てみましょう。
長軸は-3~3の線分として6という長さになっています。
短軸は-2~2の線分として4という長さになっています。
中心の位置は原点(0、0)となっていることもわかりますね。
4.まとめ
本記事では「グラフ機能を用いて様々な数学的関数を学ぶ方法」について解説しましたが、いかがでしたか?
エクセルでは様々な関数をグラフ化できることがわかりましたね。
視覚化することで、数学的な理解が格段に進むかと思います。
ぜひ活用してください。